「天草古写真カラー化プロジェクト」は、天草地域に残された古い白黒写真をデジタル手彩色の技術でカラー化し、当時の風景や人々の暮らしを、現代に、そして次の世代へと伝えていく活動です。
各所で写真展を開催しており大変ご好評いただき認知度も高まってきているところです。
私たちがあえてカラー化に取り組む理由は、色が持つ力を信じているからです。
白黒では見えづらい細かな情景や温度感、時代の空気――そうしたものが、色を通して一気に立ち上がってきます。
写真が単なる過去の記録から“心に届く記憶”へと変わるのです。


白黒写真には色の情報がありませんのでカラー化するといっても全く同じ色を再現することは不可能です。
しかし私はデジタル手彩色によるカラー化には大きな価値があると思っています。
カラー化の作業はAIの力を補助的に活用する一方で、最終的な仕上げのほとんどは手作業で行っています。色の情報が残されていない白黒写真に対し、地域の方々からの聞き取りや、当時を知る資料、少し後の時代に残されたカラー写真などをもとに、できる限り実際に近い色を再現しています。
その過程がとても大事で、1枚の写真をカラー化するにあたって得られる当時の情報はとても貴重です。
写真展などでそれらを共有することも目的の一つです。
一枚一枚の写真と向き合い、その背景や意味を大切にしながら丁寧に色を重ねています。
この活動は単なる技術的な彩色ではなく地域の記憶を再発見し、未来へと継承する試みでもあります。
プロジェクトをきっかけとして各家庭に眠っていた古い写真が見つかり、家族のあいだでたくさんの思い出話が生まれています。写真が世代をつなぎ、おじいちゃんやおばあちゃんの記憶が、孫の世代へと、そしてさらにこれから生まれてくる子孫たちへと語り継がれていく――そのきっかけとなることを願ってやみません。
彩色された写真は、「当時そのものの色」ではないかもしれません。ですが、そこに込められた思いと時間を知っていただければ、きっとその写真がもつ本当の価値に気づいていただけるはずです。
過去を加工するのではなく、過去に寄り添い、今と未来へ橋渡しするための色。
それが、私たちの考えるデジタル手彩色によるカラー化です。
「天草古写真カラー化プロジェクト」は、懐かしい天草の風景を再び色づかせながら、人と人、世代と世代、そして時間と地域をつなぐ活動です。
この色の記憶が、誰かの心に届き、郷土を思うきっかけとなることを願っています。
天草古写真カラー化プロジェクト
有馬写真館
有馬明広