有馬写真館は「家宝をつくる写真館」を名乗っています。
宝石や貴金属は、純度が高いほど価値があります。そして、純度を上げるには手間がかかります。
思い出も同じだと思っています。
その家族に由来しないものが混ざっているほど思い出の純度が下がります。流行り。写真屋の都合。映えるための演出。そういうものがあまり多すぎると、二十年後に見返したときの価値は下がっていきます。
写真館を選ぶとき、たいていは「何があるか」で比べます。衣装が何着あるか。スタジオが何部屋あるか。小物がどれだけかわいいか。
私たちには、それがあまりありません。足すことよりも、混ぜないことを選んできたからです。
何をしないと決めているのか、正直に書いておきます。
アンティーク「風」の小物は置いていません
古びた質感を似せた小物や、流行りの飾りは使いません。
可愛いものやアンティーク風の小物で撮るのがお好きな方には、できる限り合わせますし、否定するわけではありません。特に好きではないという方に、強要したくないだけです。そしてできれば、本物を使ってあげたいと思っています。
もしアンティークな雰囲気がお好きであればそのような場所でのロケ撮影をおすすめします。その方がどれだけ思い出深く価値のあるものになるか想像していただけるはずです。
七五三の女の子用には、本物のアンティーク着物が数着あります。古いもので大正から昭和初期のものです。
数は多くありません。サイズの合うお子さんに限られますし、良いものはなかなか出回らないので集めたくても集めきれていないのが正直なところです。
お宮参りの撮影には、個人輸入したニューボーン用の小物を無料でお貸ししています。本物のハンドメイドのヘッドバンドや、オーガニックコットンの衣装です。
古く見えるように作られたものと、百年を実際に過ごしてきたものは、違います。
一番良いのはご家族のものを持ってきていただくこと
正直に言うと、ご家庭には私たちがお貸しできるものより良いものがあると思っています。
ご両親が選んで買った服。お祝いにいただいた服。そこには、誰かがこの子のために選んだ、という事実があります。つまり思い入れですね。私たちがお貸しするとしてもそれにはかなわないでしょう。
ですので、お手持ちのものがあればぜひ着せてあげてください。衣装でも、思い出の品でも、一緒に写したいものがあればお持ちください。そのほうが、写真の価値は上がります。
意味のない背景は使いません
背景が写真の価値になるのは、それを選んだ理由が言えるときだけだと思っています。
「このセットがママは好きだったから、ここで撮ったんだよ」。そう言えるのなら、その背景には価値があります。お好きな雰囲気があるなら、できる限り合わせます。
けれど、なんとなく流行っていたから、という理由で選んだ背景は、二十年後に「どうしてこんなところで撮ったんだろう」になってしまいます。見返したときに背景の不自然さのほうに目がいってしまうなら、それは邪魔でしかありません。
何の脈絡もない不自然な背景を使うくらいなら、真っ白い背景のほうがいいと私たちは考えています。余計なものが何も写らないからです。
正直に申し上げると、何もない背景で撮る方がが誤魔化しがきかないので撮る側にとっては難易度は高いです。飾りに助けてもらえないので、光と構図と表情だけで一枚を成立させることになります。それでも、そのほうが後に残ると思っています。
背景に、画家や作家の方が作ってくださった本物の作品を使うことがあります。人の心のこもった作品なら、将来見返したときに「これは○○さんの作品で撮ったんだよ」と言えます。それが、その一枚の付加価値になってくれます。
無駄なシャッターを切りません
たくさん撮れば、その中にいい一枚が混ざります。それは確率の話であって、技術の話ではありません。
私が心がけているのは、使える写真、意味のある写真だけを狙って、たくさんのバリエーションを残すことです。だから、目つぶりなどを除いたほぼすべてを、そのままお渡しできます。すべての写真に目を通し、明るさや色合いを整えたうえでお渡ししています。
シャッター数という数値を伸ばすためだけに無駄なシャッターを切るなどということはありません。
撮った写真を、こちらで絞り込んでからお渡しすることはしません
いい写真がたくさんある中から、どれを残すかを選ぶ。その時間はご家族にとっても価値ある時間になります。
わざわざ悩んで選んだ一枚だから、アルバムになったときに価値があります。
とはいえ、枚数が多くて選びきれないこともあると思います。そのときは、記念写真のプロとして私が責任をもって選ばせていただきます。
データだけをお渡しして終わりにはしません
すべてのプランに、プリントを必ずお付けしています。保存用のデータディスクもお渡しします。
データはいつまでもあるようでいて実は非常に危ういものです。ハードディスクやディスクの寿命は五年から十年、クラウドはサービスが終わることもあれば、アカウントに入れなくなることもあります。
手に取れる形で一枚でも家にあることと、一枚も無いことのあいだには、雲泥の差があります。だから、どんなプランでも紙をお渡ししています。
アルバムにテンプレートを使いません
お客様ごとに、撮れる写真は違います。
表紙から一ページずつ、そのお写真に合わせてレイアウトしています。縦も横もありますし、写真の中の構図、時間の流れ、ストーリー、人の関係性、表情の種類など様々な要素をトータル的に見ながら組み立てていきます。手間はかかりますが、同じ形に流し込むのなら、オーダーメイドとは呼べないと思っています。
ニューボーンフォトで、赤ちゃんをぐるぐる巻きにしません
布で巻く撮影には、専用のストレッチ素材と、正しい手順が必要です。見よう見まねでできるものではありません。
私たちがお勧めしているのは、巻かないニューボーンフォトです。起きている時間の表情や、手足を撮ります。頬杖をついたようなポーズは合成であることが多く、一回の撮影で同じ姿勢をさせようとするのは危険です。
ご自宅に伺って撮る「おうちフォト」もご用意しています。いわゆるナチュラルニューボーンフォトと最近呼ばれているものです。生まれたばかりの赤ちゃんを移動させずに、いつもの部屋の、いつもの光の中で撮れます。
生まれた記念にプロに撮ってもらったという事実のほうが、ポーズより大切だと考えています。
流行りの色味に仕上げません
写真の色味には流行りがあります。数年も経つと、どの時代に撮ったものかがはっきり見えてしまいます。
二十年後に見返したときにちゃんとその時の記憶の色を思い出して欲しいので、私たちは流行の仕上げをしません。
肌の加工も、自然な仕上がりを大切にしています。ある程度きれいに整えますが、その人でなくなるところまではやりません。
流行りの演出や仕上げをすること自体は、アプリでもすぐにできるように、実はそれほど難しくありません。ただ提供された機能を使って真似をすればいいからです。難しいのは、その方に何が似合うのか、何を残したいのかを見抜いて、その人らしい一枚にすることのほうです。
映えるという理由だけで、撮影場所をお勧めしません
その場所が、ご家族にとって意味のある場所かどうか。二十年後に見返したときに、「ここで撮ってよかった」と思えるかどうか。そこで選んでいます。
思い出の邪魔をしません
七五三も、結婚式も、発表会も、主役は行事のほうです。参拝して子どもの成長を祝う。式を挙げる。舞台に立つ。撮影は、そこに付いてくるものです。
当然ながらいい画になるからといって、進行を止めたり、やり直しをお願いしたりはしません。その日の出来事そのものが思い出であって、それを壊してまで撮る一枚に価値はないと思っています。
純粋な思い出を大切にして、それを客観的にしっかりと残すこと。それが私たちの仕事です。
「写真家」と名乗りません
写真家という言葉には、自分の作品を撮る人、という響きがあります。
私はこれまで、自分の作品を撮ろうと思ったことが一度もありません。目指しているのは、お客様にとっての価値が最大になることだけです。ですので、肩書きは「記念写真師」としています。お客様の思い出を正しく形に残す職人でありたいと思っています。
2013年に「縁を写す有馬の眼」という写真展を開きました。展示したのは、すべてお客様のために撮った写真です。
作品を撮ろうとするのではなく、お客様にとって価値が最大になるよう努力して撮れたものが最終的にお客様にとって「良い作品」だと感じていただけると嬉しいなと思っています。
写真は、撮った瞬間より、見返したときのほうが長いものです。
数十年後にアルバムを開いたとき、そこに何が残っているか。混ざりもののない、そのご家族だけの時間が残っているか。
思い出の純度を高くすること。それが写真の価値を高めること、そして「家宝をつくる」ということだと思っています。
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