はじめに
今回は実際にお仕事させていただいた写真修復の事例をご紹介します。
お客様も当ブログを読んでいただいた上でご依頼いただいており、今回の記事についてもご許可いただいております。
ご依頼主の方々のお気持ちがとても愛情深く、私としてもやりがいを感じる良いお仕事をさせていただくことができたのでぜひ紹介させていただきたいとお願いしました。
写真修復の価値を感じていただけたら幸いです。
ご相談の経緯
まずお客様から当方が経営する有馬写真館へ一本のお電話をいただきました。
写真修復の相談をしたい、カメラのキタムラさんでは元の画像が小さすぎて修復できないと断られたとのこと。
車で1時間かかるところをわざわざご相談に来ていただきお写真を拝見しながらご提案しました。
そのときのお写真がこちらです。

まだ耳も垂れていてあどけなさのある子犬の時のお写真がこれ一枚しかないのでどうにか修復したいとのことでした。
ガラケーで撮影されたものだということで予想はしてましたがやはり画素数はかなり小さく、しかもボケとブレもあって修復作業は困難になるだろうなと思いました。
一番の気がかりは目がはっきり写っていないということ。
ペットも大切な家族であることは私自身も子供のころに犬や猫を飼っていた経験からよくわかっています。
人間と一緒でたとえ犬種が同じだとしても家族からしたらそれぞれ顔が全然違います。
なのでお顔の再現についてはいったんこちらでやってみてご確認いただいた上で修正していくことにしました。
依頼内容
お客様と写真を見ながらどのように修正していくかお話ししました。
ご希望は次のようなものでした。
- ノイズをきれいに
- 高画質化(プリントして飾りたい)
- しっぽの再現
- 背景を消す
これらを実現するにあたってAIも活用しました。
修正の過程を実際のお写真を元にご紹介していきます。
写真修復の過程をご紹介
実際に作業した画像を時系列ごとにご紹介しながら写真修復の過程をご紹介します。
ノイズの除去と高画質化
まずはAIを使ってノイズの除去と高画質化を行いました。
画素数も4倍に増やしています。

この時点ですでに胸元の毛のふさふさ感もでてきています。
ノイズがなくなるだけでかなりすっきりしますね。
AIによるディテールの復元も各所にみられます。
構図・背景・しっぽの再現について
次にPhotoshopの最新技術であるジェネレーティブ塗りつぶしを使って写真の範囲を拡大しましてお見せしてみました。

これはまだPhotoshopでもベータ版のPhotoshopでないと使えない、いわばお試しの状態の最新ツールです。
先ほどまでの写真と比べてみるとわかりますがしっぽも勝手に再現されていますし、壁には棚のようなものが勝手に生成されています。
ボケ具合も色合いもあっているのでこの写真だけ見てもAIを使ったとわからないほど。
これをもとに背景をどうするか。
しっぽはどうするかをお尋ねしました。
背景は全部差し替えて左の畳の色のような色のシンプルな空間にすることに。
しっぽについてはもっと体に沿うように丸くしていたということでそれを再現していくことにしました。
目と毛並みの再現
いったん元の構図に戻り修復作業を始めました。
ここではAIによってブレとボケの軽減をしつつ目を再現しました。

大きくなった時のお写真も見せていただいていたので毛のふさふさ具合を参考にしつつAI処理を施していきました。
胸元の毛足の長いふさふさ感が再現できました。画面では見ずらいと思いますがこの時点でも少し黒くつぶれているお身体の部分の質感を復元しています。
成長したお写真から毛の質感を持ってきています。
そして一番難関だと思われる目も成長した本人の別の写真から持ってきました。
近い犬種の子犬の写真などを参考にして目の位置を決めました。
目が復元されたことで可愛さがぐっと増しました!
AIによるしっぽの復元
ワンちゃんだけを切り取り、背景を差し替えました。

そしてまたジェネレーティブ塗りつぶしを使ってまるまったしっぽを再現しました。
お客様のご意見を元にしっぽの修正
しっぽにやはり違和感があるということでAIによって再現されたしっぽを証言と成長したころの別のお写真をもとに修正することになりました。

ブラシツールなどを使って再現してもよかったのですが本人の成長した頃の写真からよさそうな写真を選んで素材として使用しました。
色合いやボケ具合などを調整し、違和感のないように合成したところかなりふさふさ感が出てきました。
目の位置や形などを調整して完成
しっぽのふさふさ感はよくなったのですが、しっぽの先の方に白い毛がまじっていたという情報をいただき、これまた別のお写真からそのような部分を探して合成しました。
そしてお顔についてはもう少し目の位置が内側で若干吊り目かもということでそれも修正しました。

こちらのお写真をお見せしたところお顔もしっぽも記憶の中のイメージ通りということで
無事に完成となりました!
最初のお写真とくらべるとかなりすっきりしとた印象になり可愛さも倍増しています。

GIFアニメーションだと画質は荒くなりますがどのように変わっていったかわかりやすいですね。
まとめ
今回は最初にお写真を見せていただいた段階でどこまでできるか想像できない状況でしたが、直接お話を聞けたことでかなりご家族のイメージに近づけることができました。
そして思った以上に今回はAIが力を貸してくれました。
AIによる高画質化などはAIが学習している膨大な量の画像データによって実際には写っていないものを再現します。
その再現によって得られるものはある意味では偽物かもしれませんが、イメージを再現するためのツールとして考えるとかなり使い道がありますし有益であると改めて実感しました。
私はPhotoshop自体は1996年ごろから扱っていますが、ここ10年くらいで飛躍的に技術力が上がった気がします。
私自身の画像処理への理解が深まり、実務で経験を積んだこともありますが、ソフトの進化やAIの登場もかなり大きな要因だと感じます。
これからも新しい技術にも積極的に取り組んで私自身もさらにレベルアップし、
思い出のお写真を大切にされている方々の助けになれればと思っています。
もし何か修復を必要とする大切なお写真がありましたらぜひ気軽にご相談ください。

PAPi PHOTO WORKS / 有馬写真館
代表 有馬明広