熊本で平成元年創業の有馬写真館というフォトスタジオとオーダーメイドフォトブックのオンラインショップを経営しているプロカメラマンの有馬と申します。
創業当初より、つい見た目の印象だけに気を取られてしまい本質的な価値を見失いがちな記念写真について本当に価値のある記念写真とは何かということをずっと追求し、家族の幸せを通じて社会に貢献したいと考えています。
今回は水害などで水に浸かって汚れてしまった写真を救う方法についてご紹介します。
日本は台風や豪雨災害も起こりますし他国に比べると地震も頻発します。
災害に遭った時に持って逃げれるとしたら何を持って逃げますか?
「写真」と答える方も少なくないでしょう。
それは高価な宝飾品よりも家族との絆の象徴である写真の方が価値が高いと証拠ともいえます。
しかし実際に災害に遭うとアルバムを探して手に逃げれるかというと非常に厳しいものがあると思います。
私も熊本地震を経験しましたがあのすさまじい揺れで生命の危機を感じた直後は全然余裕もなく、大きな前震(本震だと思ってましたが…)があって警戒していたからこそすぐ持ち出せるように枕元に準備していたメインカメラとレンズの入ったカメラバック、写真データの入ったハードディスクの一部や緊急避難グッズだけやっと持ち出せたくらいでした。
前震がなければ何も持ち出せなかったと思います。
地震の場合は建物が倒壊することもありますし、部屋に残された写真がその後雨に濡れてしまうことも当然ありえます。
最近では能登半島の地震と津波で多くの方が被災されたばかり。
熊本の人吉では2020年に大水害があり私の親せきも被災しました。
親せきの家も1階はすべて水没。周辺はかなり悲惨な状況になっていたようです。
水害となると水没してしまった写真も数多く発生してしまいますよね。
実際かなりのご家庭で被害があったようです。
先日「あらいぐま人吉」という水害で被災した写真の洗浄を行うボランティア団体が行っているイベントに参加させていただいていろいろとお話を伺うことができましたのでそこで伺ったお話も踏まえて水害に遭ってしまった写真の救出方法についてご紹介させていただきます。
もしも写真が水没してしまったら
アルバムから写真を取り外す
まず可能であればアルバムから写真を取り出してください。
もし貼りついてしまって取れない場合は無理にはがそうとすると余計に写真が損傷してしまうこともありますので無理はしないでください。
取り外せなかった場合はページを閉じてしまうと乾きませんし余計に貼りつくことにもなりますのでページに隙間ができるようアルバムを開いて工夫して干してください。
泥などの汚れがついている場合は濡れた布などで優しく拭いてあげます。
完全にシートに貼りついているようなら思い切ってシートごと写真の形に合わせてカッターナイフなどで切り取ります。
その後水に浸すことでシートがきれいに取れて分離できる可能性があります。
すぐに乾燥させる
一番大事なのはなるべく早く乾燥させるということ。
濡れてしまった写真は他のものに貼りつきやすいということもありますが、ここでの最大の目的はバクテリアの繁殖を抑えることです。
これは私もお話を伺うまで思ってもいなかったのですが、水害に遭ってしまった写真はみな外側から浸食されて画像が消えてしまっているのはバクテリアが悪さをしているからなのです。
写真は表面に薄い透明な保護膜を施してあるため外側からじわじわと水がしみこんでいきます。
しみこんだところは絵の具が水に溶けるように滲んで消えていくのではなく、バクテリアが色が印刷された層(ゼラチン)を食べてしまうことにより画像が消えていくのだそうです。
バクテリアが繁殖すればするほど消えて行ってしまいますのでいち早く乾燥させてください。
被災した直後は余裕がなくなかなかそこまでできないかもしれません。
実際水害に遭った人吉の方の話を聞くと落ち着いたときに写真の入ったアルバムを発見しても泥水に浸かってしまっているためもうダメだとあきらめて捨ててしまった人がほとんどだそうです。
泥水に使ったものは衛生的にもよくないので室内ではなくガレージのような場所に置かれることも多いらしく、そのまま放置される状態がずっと続いてしまうことが多いようなのですが、その間も濡れてしまった写真のバクテリアはどんどん繁殖して写真をダメにしてしまっています。
普通は水害に遭った時の写真をどうすればいいのかわかって生活している人はごくわずかですよね。
だからこそこのブログでも少しでも多くの方に知っていただけたらと思っています。
濡れてしまった写真は乾燥させる!
これだけは絶対に覚えておいてください。
適切に保管する
水害に遭われた方のお話を聞くと濡れてしまったものはすべて処分されるそうで、洗ったら大丈夫なものもあるだろうと考えていた自分の甘さを実感しました。
きれいな水にぬれただけならそうかもしれませんがいろんなものが混ざった不衛生な泥水にさらされて洗って元通りなんてものはほとんどないでしょう。
しかし写真は何物にも代えがたい家宝のようなものです。
もし濡れてしまっていても家族の大切な思い出はぜひ残してください。
泥を拭いて乾かした写真は安全なところでいったん生活が落ち着くまで適切に保管しておいてください。存在さえしていればまだ取り返しがつくこともあります!
洗浄する
アルバムから取り外された写真は手作業で丁寧に洗浄することでバクテリアによる損傷を食い止めることができます。
具体的な方法についてはこちらのFUJIFILMの公開しているページを参考にしてください。
先日のあらいぐま人吉さんのイベントでは実際に作業の様子も見させていただき、私の娘も洗浄作業を体験させていただくことができました。
私の想像では印刷されたものがにじむように外側から消えていくのかと思っていたのですが、前述したとおりバクテリアによって画像が消えるということで、水につけても画像がにじんだり消えたりすることもなくバクテリアに浸食された部分だけがきれいに取れて白くなっていました。
逆に言うとバクテリアに浸食された部分以外は水につけて丁寧に洗浄することで驚くほどきれいになっていて感動しました。
大切な写真は例え部分的に消えてしまってもその価値は変わらないものです。
作業は手間がかかるものではありますがあきらめて捨ててしまうよりも100倍ましです。
洗浄までしてしまえば乾燥させてまたポケットアルバムなどで保管しておくことができるようになります。
専門家に依頼する
写真が大量にあったり損傷がひどかったり自分たちの手では難しい場合もあると思います。
被災してしまうとこれからの生活のことで精いっぱいにもなります。
そんな時はあらいぐま人吉さんのようにボランティアで活動されている団体が全国にあるようですのでネットで調べてみてください。
きっと力になってくれるはずです。
おすすめの裏ワザ
写真が思うようにきれいにならない、一部が貼りついてしまい写真が外せないなどトラブルもあると思います。そんな時は写真を写真に撮るという手があります。
今はスマホできれいに写真が撮れる時代。
写真に撮ってデジタル化することでバックアップにもなります。余裕があれば心配な写真はその都度写真に撮ってみるといいと思います。
きれいに洗浄までできた写真もこの機会に写真に撮ってデジタル化しておきましょう。
家族に送ることでこれから先残る確率もぐっと上がりますし、共有することで家族のきずなも深まります。
ただスマホで撮影するだけでなくアプリを使うことでよりきれいに残すことができます。
Googleが提供しているフォトスキャンというアプリを試してみてください。操作も簡単ですし、何より反射の影響をかなり抑えてくれますのでおすすめです。
スキャナーが使える場合はスマホでデータ化するよりもきれいにデータ化できますのでぜしスキャナーを使ってデータ化することをおすすめします。
ただスマホでのデータ化も手軽ですし解像度も十分ですので頭に入れておいてください。
あとでスキャナーでデータ化を考えているという場合も念のためいったんスマホでデータ化しておいた方がいいでしょう。
破損個所をデジタルで修復
水害に被災した状態から無事に救出された写真は残念ながら完全に元通りとまではいかないと思います。
写真の中には七五三やお宮参り、結婚記念写真などの家族にとって重要な写真もあるでしょう。
周囲がバクテリアに浸食されて消えてしまった写真でも生成AIを使うことでかなり修復できるかもしれません。
これは私が試しに修復してみたものです。
バクテリアに浸食されて欠損してしまっていた部分を生成AIを利用して修復してみました。
自分でやってもびっくりしましたがかなり自然な感じに修復できました!
そのままでもっていてもいいとは思いますが、私は写真の価値は見返した時に心で何を感じるかだと思っております。
損傷したままの写真を見返すたびに水害に遭ったことを思い出し、損傷した部分を見つめて残念な気持ちにもなると思います。
何よりもぱっと見の印象がまるで違いますので修復する価値は十分にあるということがお分かりいただけると思います。
写真修復については私は専門家ですのでもしご希望であればぜひご依頼ください。
無料見積もりでご納得いただける場合のみご依頼いただければ大丈夫です。
↓写真修復無料見積もり
まとめ
写真をプリントして大切にされている皆様は多いと思いますが水害に遭った場合の対処法まで知っている方はほとんどいないと思いますのでこちらの記事でご紹介したことを頭の片隅にでもおいていただけたら本当に嬉しいです。
前述しましたが熊本の人吉では水害に遭った方の多くは残念ながら写真を失ってしまわれました。
本当に悲しいことです。
水害に遭ってもまだ希望があるということをより多くの方に知っていただきたいと心から願っています。
SNSをされている方はシェアなどしていただけると幸いです。
多くのご家族の家宝が救われますように。
参考にさせていただいたHPリンク
熊本市と天草を中心に活動するちょっと変わったこだわりの写真館
オーダーメイドで写真修正とレイアウトして作るフォトアルバム
代表 有馬明広