手彩色写真とはあまり聞きなれない言葉かと思いますが、簡単に言うと印刷された白黒写真に絵の具などで色を付けたものです。
これがその一つです。
撮影されたのはなんと1870年代です。
鈴木真一という当時の写真家が撮影したもので手彩色が施されています。
こちらのモデルについては「唐人お吉」の斉藤きちさんとされて紹介されていたりもしますが、そうではなく当時の外国人のお土産用に撮られた写真だとするブログ記事なども見かけます。
真相はわかりませんが撮影した方が鈴木真一さんだということはほぼ間違いないようです。
海外のサイトでもそのように紹介されていますし、作品集なども過去に出版されているようです。
今から軽く百年以上も前の当時の写真を見ることができるのはとても幸運だと思います。
手彩色写真は色が付いているので当時どのような着物が着られていたのかもうかがい知ることができます。
とはいえ実はこの写真については違う色で彩色された別パターンを他にもいくつか確認しています。
つまりこの写真については彩色した職人が元の色を知らなかった可能性が高いです。
ですが当時の着物として違和感のない色を選んでいるだろうと推測できます。
写真が出始めたばかりのころですので初めて見た人は「すごい!」と思ったと同時に「色は?」と思ったことは想像に難くありません。
彩色をしてみようというのは自然な発想だと思います。
この時点では色を付けるといっても限界があったと思いますが100年以上たった今ではもっとリアルな色付けができます。
私は先人たちが残してくれた貴重な写真と彩色による色の情報を元に最新の技術を使ってデジタル彩色を試みました。
その結果がこちら。
全体的にふわっとしておりましたのでぎゅっと引き締めつつも汚れや傷をある程度取り除き色付けしました。
やはり肌の色が乗るだけで全然印象が違いますね。
実在した方なのだなという実感がすごくわいてきます。
さらに生成AIを使ってこの写真の「外側」を描画してみました。
割と自然な感じで描かれていなかった部分が生成されて驚きました。
着物の柄を手に持っているあたりシュールですが…
それぞれ比較してみるとこんな感じです。
手彩色も独特な雰囲気でとても素晴らしいのですがリアルさでいうとデジタル彩色の方が数段上をいきますね。
生成AIはまだまだといったところですがまだ登場したばかりですので今後さらにしていくことでしょう。
手彩色にしてもデジタル彩色にしても一番の価値はリアリティだと思います。
本当の色ではないかもしれない。
でもその人がその時代に確かに生きて存在していたんだなというリアリティを感じることができるというところに大きな価値があると思います。
今後も時間を見つけて同じように手彩色写真をデジタル彩色でさらに命を吹き込んでみたいと思っています。